キャリアとキャリア開発


「キャリア(career)」の定義は様々であり、一般的には過去の「経歴・活動歴・実績」を意味しますが、全人生における「仕事人生」(横山,2004)を意味する立場や「生涯を通しての人間の生き方・表現」(Shein,1978)、「自己発達の全体の中で、労働への個人の関与として表現される職業と、人生の他の役割との連鎖」(Super,1957,1984)など「生涯の生き方」とする立場があります。我が国でも「キャリア」をワークやライフを含む広義の概念とする(JACC,2011)など、人生全体を捉える立場が主流になってきました。

「Career Development」は、日本では「キャリア発達」または「キャリア開発」と訳されます。

「開発」には、本人の意思の発現と関係者の支援によって、潜在能力が顕在化(developmentにはアナログ写真での「現像」の意味あります)されてゆく開発のプロセスのイメージ(横山,2004)があり、産業分野では「キャリア開発」を、学校教育分野では「キャリア発達」を用いることが多いといえます。「キャリア開発」は、「キャリア=仕事人生」と考えるなら、「仕事人生における能力・スキル・意識の開発」となり、「キャリア=人生」と考えるなら、「人生を生きる為の能力・スキル・意識の開発=全人生の開発」を意味することになります。 また、変化する社会の中で人生を生きるには、内的キャリア(※1)を明確にすることや人生の意味・価値を構成し(アイデンティティ・ワーク※2)、納得のゆく人生をデザインすることが重要になります。

JCCでは、内的キャリアや人生の意味・価値の構成&再構成の支援を重視したキャリア開発支援活動を行っています。

内的キャリアと外的キャリア

内的キャリア(※1):エドガー・H・シャインが提唱した概念である。キャリアに関して、仕事の内容や実績、組織内での地位や役割などの客観的側面を「外的キャリア」、仕事に対する動機や意味付け、能力やスキル、価値観などを「内的キャリア」として区別した。 シャインは、内的キャリアの研究からとして「キャリア・アンカー」という概念とその活用法を提唱している。

キャリア・アダプタビリティ

キャリア・アダプタビリティ:個人のキャリアにおいて、変化の必要性が生じたときにその変化を受け入れ適応できる能力であり、4Cと呼ばれる、関心(Concern)、統制(Control)、好奇心(Curiosity)、自信(Confidence)の要素で構成されるとされている。

アイデンティティ・ワーク

アイデンティティ・ワーク(※2):自己のアイデンティティの構成と再構成のプロセスおよびその作業。


キャリア・カウンセリング

「キャリア・カウンセリング」についても多様な定義があります。

Super(1951)は、「キャリア・カウンセリング」は、「人が仕事の世界における自己と自分の役割について統合した適切な姿を発展させ受け入れるのを支援する過程であり、この概念を現実に対して試行し、それを実現へと変化させる過程であり、その結果、その人自身には満足を、社会には利益をもたらす」としています。また、Savickas(2011)は、キャリア・カウンセリングを「キャリア構成のためのカウンセリング」とし、横山(2004)は、「キャリア開発のためのカウンセリング」であると定義しています。

いずれの定義も キャリアを生涯(ライフキャリア)として捉え、カウンセリングがキャリア開発やキャリアデザインを実現する重要なアプローチとして捉えていると言えます。